愛を、ください。
ただいま、と言うとにこにこした唯人が玄関まで走ってきた。
「おかえり!服買えたか?じゃあそろそろ俺、帰るわ。藍とも話せたし、ね?」
そういって家をでた。
藍を見るとゆるゆると瞳を揺らして今にでも泣きそうな目でおかえり、と呟いた。
「どうした?…さみしかったか?」
「…。」
冗談ぽく笑うと藍は何も言わずに俯いた。
「おい。ほんとにどうした?」
「…っ。なんでも、ない。」
「なぁ。前にも言ったよな?言いたいこと言わないと怒る、って。」
「…ほんと、になにも、ない。」
…こういう時ってどうしたらいいか分からない。なんでもないって、どう考えてもなんでもなくはないだろ。
放っておいた方がいいのか、無理やりにでも言わせた方がいいのか。
でも、無理に聞いて傷つけたら。もう藍は人を信じられなくなってしまうかもしれない。
なんて。
逃げてるだけ、か。今までの生活とはかけ離れていて。それにビビって。
大の大人が余裕なくして、どうすんだよ。こんなんで藍が安心できるわけねぇだろ。
髪をくしゃっと掴んでそうか、と笑ってみる。そうしたら藍も少しはほっとした気がした。