愛を、ください。




少し落ち着くと、とてもいい匂いがしてがお腹が空いた。




…あれ。お腹空くって今まであったっけ。




今まではむしろ食べることに抵抗があった。食べても吐いてしまう恐怖や、吐いたら怒られると思ってて。



でも、高木さんといると違う。
いい匂いだと感じるし、食べてみたいとも思う。



「ほら、食べられるだけ食べよう?今日は鮭のお粥にしてみたよ。…お粥ばっかりで味気ないかもしれないけど、もう少し体力が戻ったら美味しいもの食べような。」



そんなことを考えているうちに、目の前のテーブルにはお粥が置かれていた。とても落ち着く、いい匂い。



「…違う、の。へん、だよ。」



「ん?」


「高木さんと、いると、お腹がす、くの。…こんなに、食べたい、と思うの、はじめてなの。」



お粥ばっかでごめんな、という困った顔をした高木さんを見ていたら、そう伝えたくなった。



なに、これ。


色々な思いが頭の中でぐるぐるする。全部全部、高木さんとあってからだ。



「ふふっ、そうか。なら冷めないうちに食べようか。」



そう微笑みながら、スプーンを渡してくれた。あつあつのお粥をすくい、少しだけ冷ます。それから口に運ぶと、ほろっと優しい味がした。



本当に本当に美味しくて。



何故か涙が出そうになって、堪える。



高木さんは、ちゃんと食べられているだろうか。わたしは未だに高木さんがちゃんと食事をしているところを見ていない。




もしかして、私の分を作るのが大変で食べていないのかも。






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