愛を、ください。
知らない季節。
「暖かくなってきたな。」
「なに、が?」
「もう、季節は春だよ。」
3月なのに暖かいの?そう聞くと不思議そうな顔をされて。
「...ほとんど外、に出た、ことがない、の。」
ずっと、家の家事ばかりしていた。暴力は暗い地下で行われていた。1度外に出ようかと言われ喜んで車に乗り込んだら捨てられて。
それ以来、外は恐怖でしかなかった。
「外って、寒いの。」
「今は暖かいよ。」
「そ、なの」
暖かいって寒くないってことなのかなぁ。暖かいってよく分からない。少し怖いな。
「外、でてみる?」
そう言われて、固まった。
「...っもう、いらないの」
咄嗟に出た言葉は掠れていて。
...捨てるってことかなぁ。やっぱり迷惑だったのかも。でも、よかった。これ以上高木さんと一緒にいたら、心臓ぐちゃぐちゃになりそうだから。
「何言ってんの?捨てるなんて言ってないよ。一緒に春は暖かくて気持ちがいいんだよーってことを知って欲しいの。」
そう言うとカーテンを開けた。
外はきらきら眩しくて。明るくて。青い空がにふわふわと白い雲が浮かんでいる。
...施設で読んだ絵本と一緒だ。