恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
「……分かった。小春に確認して返事する」


ブレンドをちゃっかりご馳走になってから店を出ると、外はすっかり暗くなり、気温もぐっと下がっていた。


「さむっ」


雪でも降ってきそうな寒さだ。


ふーと吐き出した息は白くけぶり、お洒落な通りに消えてしまった。


白いコートに身を縮込めて歩き出した時、携帯が鳴った。


『あ! 出た出た! お疲れ様です』


いま店を閉めたばかりだと言う小春からだった。


『まだ青山のお店ですか?』


「今ちょうどカフェを出たとこ」


『今、話しても大丈夫ですか?』


「うん。どうかしたの?」


『今夜、何か予定入ってたりします?』


「特にないけど」


『良かった。実は今、堀北さんと一緒なんですけど』


「堀北さん?」


あたしが高3の夏休みにお世話になった堀北さんだ。


『はい。陽妃さんが出て行ったあと、お店に顔出してくれて。久し振りだったから妙に盛り上がっちゃって』


大学卒業後、介護福祉関係の仕事に就いてからも、堀北さんは時々トルテに顔を出してくれる。


それで、たまに店が終わったあと飲みに行くようになったのだ。

< 10 / 223 >

この作品をシェア

pagetop