恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
写真の束を袋に戻し、溜め息を吐きながら鞄に突っ込んで海斗は「困ってます」と愚痴をこぼしはじめた。


「アパート中、ポスターだの切り抜きだの。埋め尽くされてて。疲れて帰っても休んだ気がしなくて」


「そんなに夢中なの?」


いつからそんなことになっていたのか聞くと、海斗はうなだれ気味に答えた。


「高1の冬です。友達に誘われて福岡のドームコンサートに行ったのがきっかけみたいで」


それまでアイドルには全く興味を示さなかったのに、そのたった一度のコンサート以来、どっぷりハマってしまったらしい。


「しかも、なかなか良い席だったみたいで。めちゃくちゃ近くで観れたらしくて」


「へえ」


「その時、一瞬で恋に落ちたらしいですよ、ニノに」


「恋?」


「結婚できると思ってるんです、本気で」


海斗は残りのシャンパンを煽るようにぐーっと飲み干して、苦笑いした。


「ばかでしょ、美波。現実を見ろって兄は言ってるのに聞く耳持たないっていうか」


「いいじゃない。まだ若いんだし」


「あ、陽妃さんまで美波の肩持つんですか。毎日毎日ニノニノ言われる身にもなってください。うんざりですよ」


「そっかあ、ニノか。残念。自称与那星のマツジュンとなら知り合いなんだけどなー」


「えっ?」

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