恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
明日、記憶が戻ってしまうのではないか。
記憶が戻ったら、海斗が離れて行くんじゃないか。
毎日、怖かったのかもしれない。
それでもあたしに海斗を会わせてくれたその気持ちを思うと、これ以上不安にさせることはできないと思った。
「帰ったら葵ちゃんに伝えて。あたしもいちばん星見つけたよって」
「え?」
「伝えてくれたら、葵ちゃん分かると思う」
「いちばん星、ですか」
海斗が首を傾げながらも真っ直ぐ見つめてくる。
真っ黒な瞳に吸い込まれないように、やっとの思いで微笑んだ。
あたしのいちばん星。
「彼、今月、帰国するの」
はっきりした日にちは分からない。
でも、もうすぐ潤一が帰って来る。
「彼が帰って来たら、あたしたち、結婚すると思う」
海斗の瞳がくるんと黒く輝いた。
「そう、なんですか」
「うん」
「おめでとうございます」
微笑んだ海斗がすっと手を差し出した。
「幸せになってください」
あたしはその手を握り返した。
「ありがとう。海斗も」
もう一度握手を交わし、あたしたちはどちらからともなく、それが極自然なことのように手を離した。
記憶が戻ったら、海斗が離れて行くんじゃないか。
毎日、怖かったのかもしれない。
それでもあたしに海斗を会わせてくれたその気持ちを思うと、これ以上不安にさせることはできないと思った。
「帰ったら葵ちゃんに伝えて。あたしもいちばん星見つけたよって」
「え?」
「伝えてくれたら、葵ちゃん分かると思う」
「いちばん星、ですか」
海斗が首を傾げながらも真っ直ぐ見つめてくる。
真っ黒な瞳に吸い込まれないように、やっとの思いで微笑んだ。
あたしのいちばん星。
「彼、今月、帰国するの」
はっきりした日にちは分からない。
でも、もうすぐ潤一が帰って来る。
「彼が帰って来たら、あたしたち、結婚すると思う」
海斗の瞳がくるんと黒く輝いた。
「そう、なんですか」
「うん」
「おめでとうございます」
微笑んだ海斗がすっと手を差し出した。
「幸せになってください」
あたしはその手を握り返した。
「ありがとう。海斗も」
もう一度握手を交わし、あたしたちはどちらからともなく、それが極自然なことのように手を離した。