恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
青山、表参道。


このエリア周辺はお洒落なブティックやオープンテラスのスタイリッシュなカフェや、オーガニックカフェなどが軒を連ねる。


渋谷、原宿とはまた違う、落ち着いた華やかさがあって、ゆったりとした時間が流れている気がする。


でも、1本裏の通りに足を踏み入れると雰囲気は一変する。


細い路地が広がり、ひっそりとしたノスタルジックな空気に包まれる。


デザイナーのアトリエやカジュアルな雑貨、ちょっと珍しい本屋さんが並ぶ。


星ひとつ見付からない、黒紅色の空。


いつの間にか街灯やイルミネーションが灯って、街は夜の顔を覗かせていた。


ガラスをふんだんに使ったファッションビルやブティックが軒を連ねる通り。


足早に歩いていたあたしは、あるショーウインドウ前で思わず足を止めた。


厳かで厳粛な白い光が通りへ流れ出していた。


ディスプレイされていたのは純白のウエディングドレス。


「うっ……わあ……」


たまらずため息が漏れる。


ビスチェのようなデザインのウエストから下がぴったりとしたタイトなマーメイドライン。


膝下から裾は長い長いトレーンで、クラシカルなウエディングドレスだった。


< 12 / 223 >

この作品をシェア

pagetop