恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
「私、バツイチだったから。仕事も転々としてたし。何やっても空回りしてうまくいかなくて。結婚して出産して、離婚して。ドロドロの人生。んだけど、昇さんさ出逢って、人生変わった」


今はなまら幸せだよ、そう言った宏子さんのピアスがキラキラ輝いていた。


「私、昇さんなしの未来なんか考えられない。絶対、離れたくない」


素敵なふたりだなあと思う。


「本当に、大好きなんですね、親方のこと」


「んだなあ。んだけど、もう好きとかそんなの通り越して、かけがえのない人だよ、あの人は」


恥ずかしくて本人さは言えたもんじゃないけど。


と、宏子さんは照れくさそうにはにかんで、そのカードに触れた。


「これ。私もこのカードが出たんだ」


「え?」


「昇さんのこと好きなんだって自覚した時、何度占っても、何度もこのカード出たんだ」


【THE WHEEL OF FORTUNE 】


運命の輪。


「これはもう転換期なんだべなって思って。それまで働いてた職場辞めて、昇さんの夢さ着いて行くって決めたんだ。したら、少しずつ未来が見えてきてさ」


どん底だった人生が良い方向に動き出したのだと、宏子さんは言った。


「あのさ、陽妃ちゃん」


「はい」


「そのユタのおばあの言う通りかもしれないね」


「え?」


「確かに。誰も運命にら逆らえねんだべな。んだけど、私は思うよ。未来は変えられるんだって」


運命には逆らえなくても、未来は切り開くことができるのだと、宏子さんは言った。


「選択を迫られた時、行動に移せるか移せないかだべ。待ってるだけじゃ、何も変わらないよ。奇跡は起きないよ」










会計を済ませ、外に出ると、雨はもうすっかりあがっていた。


ひんやり冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。


胸がすうっとした。


北海道は空気も星も綺麗だ。


待ってるだけじゃ、何も変わらない。


か。


あたしは何かを勘違いしていたのだろうか。
< 159 / 223 >

この作品をシェア

pagetop