恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
ふと、宏子さんの言葉が頭を過った。


未来は変えられる。


待ってるだけじゃ、何も変わらない。


あたしは手紙を握り締めて部屋を飛び出し、SOUL NOTE に駆け戻った。


「宏子さん!」


店ではふたりが後片付けをしていた。


グラスを下げようとしていた宏子さんが振り向く。


「陽妃ちゃん! なしたの? 忘れ物でもした?」


あたしはふるふると首を振った。


「最後のカード、やっぱり引いてください」


えっ、と宏子さんが目を丸くする。


「知りたいんです。結果。例え最悪の結果でもいいから」


宏子さんの言葉がもし、本当なら。


最後のカードの結果をきっかけにしようと思った。


「ちょっと待って」


と宏子さんがテーブルに向かって行く。


タロットカードはさっきの状態のままだった。


宏子さんがカードの上に手を置く。


「したら、引くよ」


あたしはごくっと唾を飲み込み、しっかり頷いた。


もし、カードが良い意味を示したら。


その時は、きっかけにしよう。


堀北さんがくれたこのチャンスをきっかけにしよう。


ゆっくり、カードがひっくり返される。


カードを見つめて、宏子さんが「ああ」と声を漏らした。


そして、そのカードをあたしに見せて微笑む。


【THE JUDGEMENT】


「審判。正位置」


宏子さんは言った。


「復活、再生。そして、決着」


決着。


「あるいは、全く予想していなかった展開が起きるとか、成長するとか。もしくは、再会」


「……再会?」


「んだ」


なまら良いカードだよ、と宏子さんは言った。


「宏子さん」


あたしは、ほうっと息を吐き出して、堀北さんから届いたそれを胸に抱き締めた。


「宏子さんの言う通りです。待ってるだけじゃ何も変わらないのかもしれない。運命には逆らえないけど……未来は切り開けるのかもしれない」


堀北さんが、潤一の夢を叶えたように。
< 161 / 223 >

この作品をシェア

pagetop