恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
「知り合いと一般の方の他に、出版社も何社か来てくれてるんだ」


「すごいですね」


「ゆっくり見て行って。今日はこっちに泊まって行くんだろ?」


「いいえ。20時発の便で帰ります。明日、仕事だから」


「そっか。でも、昼はささやかだけど会食を用意してあるから、良かったら。じきに小春ちゃんも来るだろうし」


「ありがとうございます」


堀北さんに軽く会釈をして中に入ると、そこはまるで知らない場所のようだった。


「すごい……」


ここで潤一と向かい合って肉じゃがを食べていたなんて、想像もつかないほどだ。


アトリエは堀北さんたち発起人の手で、スタイリッシュなギャラリーに生まれ変わっていた。


「すみません」


あたしは混雑する人をすり抜けながら入り口から時計と逆回りに、展示されている作品ひとつひとつ手に取るように見て回った。


【アメリカ グランドキャニオン】


【ドイツ ケルン大聖堂】


【トルコ イスタンブール】


【イタリア フィレンツェ大聖堂】


【インド タージ・マハル】


【ペルー マチュ・ピチュ】


【オーストラリア フレーザー島】


そして、中間地点に差し掛かろうとした時、あたしはひとつ手前の2枚組の写真パネルの前で足を止めた。


「えっ、ウソ……やだ」

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