恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
あたしは堀北さんに微笑みを返しながら、しっかり頷いた。
潤一。
あたしも、その自由な生き方をした、つかみどころのない魅力に惹かれたひとりです。
「彼は最期の最期のまで写真を撮り続けました。夢への情熱と誠実さは彼が撮り続けてきた風景全てに現れており、メッセージが込められています」
挨拶も終盤に近付いたころ、後ろから静かに肩を叩かれて振り向くと、小春だった。
「小春」
いま来たの、と口をパクパク動かすと、
「道が混んでて」
すみません、と小春は小声で言い、あたしの隣に並んだ。
少し伸びた髪をバレッタで束ねた小声は、相変わらず可愛らしい笑顔で堀北さんに視線を向ける。
「皆様、僕から向かって左手奥から手前に3枚目の写真をご覧ください」
来場者がいっせいに視線を向ける。
そこに展示されていたのは、フリーフォトグラファーとして最後の作品となってしまった、アンコールワットの写真だった。
残念ながら、夜明けのものではなく良く晴れた日中のものだけど、幻想的で美しい1枚だ。
睡蓮が浮かぶ池に映り込む、アンコールワット。
「アンコールワット。彼はこの写真を最期に、20**年8月、カンボジアで命を落としました。享年33という若さでした。ですが、僕は信じています。天国でも、彼は写真を撮り続けているのだと」
そして、堀北さんは「最後に」と続けた。
「彼と、彼の写真を愛してくださった皆様に心より感謝致します。そして、これからも皆様の心の中で榎本潤一が生き続けることを切に願っています」
潤一。
あたしも、その自由な生き方をした、つかみどころのない魅力に惹かれたひとりです。
「彼は最期の最期のまで写真を撮り続けました。夢への情熱と誠実さは彼が撮り続けてきた風景全てに現れており、メッセージが込められています」
挨拶も終盤に近付いたころ、後ろから静かに肩を叩かれて振り向くと、小春だった。
「小春」
いま来たの、と口をパクパク動かすと、
「道が混んでて」
すみません、と小春は小声で言い、あたしの隣に並んだ。
少し伸びた髪をバレッタで束ねた小声は、相変わらず可愛らしい笑顔で堀北さんに視線を向ける。
「皆様、僕から向かって左手奥から手前に3枚目の写真をご覧ください」
来場者がいっせいに視線を向ける。
そこに展示されていたのは、フリーフォトグラファーとして最後の作品となってしまった、アンコールワットの写真だった。
残念ながら、夜明けのものではなく良く晴れた日中のものだけど、幻想的で美しい1枚だ。
睡蓮が浮かぶ池に映り込む、アンコールワット。
「アンコールワット。彼はこの写真を最期に、20**年8月、カンボジアで命を落としました。享年33という若さでした。ですが、僕は信じています。天国でも、彼は写真を撮り続けているのだと」
そして、堀北さんは「最後に」と続けた。
「彼と、彼の写真を愛してくださった皆様に心より感謝致します。そして、これからも皆様の心の中で榎本潤一が生き続けることを切に願っています」