恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
堀北さんの挨拶を聞き終えて、ようやく理解することができた気がした。
乗り越えなさい、とか、甘えるんじゃない、だとか。
そんな厳しい言葉を言って、あたしに無理矢理仕事を与えてきた律子おばさんの優しさを。
きっと、こういうことだったのだろう。
真実一路。
そうでしょう?
潤一。
あたしは、アンコールワットの写真を見つめてこっそり涙ぐみながら、心の中で彼に伝えた。
ありがとう。
あなたと出逢えたことは、あたしの人生の誇りで、宝物です。
潤一。
心から、本当に、ありがとう。
そして、あたしは壇上の堀北さんに視線を戻した。
「長くなってしまいましたが、皆様の目に映る風景に真実一路の光が満ちることを願い、挨拶とさせていただきます。本日はお忙しい中、榎本潤一追悼個展にご足労いただき、誠にありがとうございました」
堀北さんは目にうっすらと涙を浮かべながらゆっくりと会場内を見渡し、本当にゆっくりと頭を下げた。
会場中から温かい喝采がわく。
窓から射し込む陽射しが、アトリエの片隅に小さなひだまりを作っていた。
それは、拍手が鳴り止まない会場を見渡していた時だった。
「……えっ」
【君の見ている風景】
2枚の写真パネルの前に立ち、じっと眺めている人物の横顔に引き寄せられ、はっと目を見張った。
すらりと高い背。
ダークグレイ色のスタイリッシュなスーツ。
黒く艶のある髪の毛。
黒曜石のような……瞳。
まさか。
あたしはその横顔を見て、ごくっ、と息を飲み硬直した。
「ですよね、陽妃さん。……陽妃さん?」
小春が何かを話しかけて来ているのは分かっていたけど、目を離すことが出来なかった。
うそ。
なんで……。
乗り越えなさい、とか、甘えるんじゃない、だとか。
そんな厳しい言葉を言って、あたしに無理矢理仕事を与えてきた律子おばさんの優しさを。
きっと、こういうことだったのだろう。
真実一路。
そうでしょう?
潤一。
あたしは、アンコールワットの写真を見つめてこっそり涙ぐみながら、心の中で彼に伝えた。
ありがとう。
あなたと出逢えたことは、あたしの人生の誇りで、宝物です。
潤一。
心から、本当に、ありがとう。
そして、あたしは壇上の堀北さんに視線を戻した。
「長くなってしまいましたが、皆様の目に映る風景に真実一路の光が満ちることを願い、挨拶とさせていただきます。本日はお忙しい中、榎本潤一追悼個展にご足労いただき、誠にありがとうございました」
堀北さんは目にうっすらと涙を浮かべながらゆっくりと会場内を見渡し、本当にゆっくりと頭を下げた。
会場中から温かい喝采がわく。
窓から射し込む陽射しが、アトリエの片隅に小さなひだまりを作っていた。
それは、拍手が鳴り止まない会場を見渡していた時だった。
「……えっ」
【君の見ている風景】
2枚の写真パネルの前に立ち、じっと眺めている人物の横顔に引き寄せられ、はっと目を見張った。
すらりと高い背。
ダークグレイ色のスタイリッシュなスーツ。
黒く艶のある髪の毛。
黒曜石のような……瞳。
まさか。
あたしはその横顔を見て、ごくっ、と息を飲み硬直した。
「ですよね、陽妃さん。……陽妃さん?」
小春が何かを話しかけて来ているのは分かっていたけど、目を離すことが出来なかった。
うそ。
なんで……。