恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
夏の陽射しに打たれながら呆然としていると、
「もー! 陽妃さん!」
黒いツーピースのスカートの裾を揺らし、小春があたしのバッグを持って追いかけて来た。
「どうしたんですか?」
「……え?」
「急に飛び出して行くから。バッグも起きっぱなしで」
差し出されたバッグを受け取り、
「ごめん。ありがとう」
あたしは苦笑いして「ううん」と首を振り肩をすくめた。
見間違いだ。
きっと。
「なんでもない」
海斗がここにいるわけがない。
沖縄にいるのだから。
それに、海斗がここに来る理由もない。
そもそも、潤一と海斗にはなにひとつ接点などないのだから。
ここは大都会、東京なのだ。
似ている人がいたっておかしくない。
見間違いだ。
「陽妃さん、中に戻りましょう。せっかくだし、ご馳走になりませんか? サンドウィッチ」
「そうだね」
「行きましょう」
あたしはもう一度だけ通りを確認して、踵を返した。
「陽妃さんに報告したいことたくさんあるんです。聞いてくれませんか」
「もちろん。あたしもたくさんあるの」
バカみたいだ。
海斗がここに来るなんて、絶対、有り得ないのに。
「もー! 陽妃さん!」
黒いツーピースのスカートの裾を揺らし、小春があたしのバッグを持って追いかけて来た。
「どうしたんですか?」
「……え?」
「急に飛び出して行くから。バッグも起きっぱなしで」
差し出されたバッグを受け取り、
「ごめん。ありがとう」
あたしは苦笑いして「ううん」と首を振り肩をすくめた。
見間違いだ。
きっと。
「なんでもない」
海斗がここにいるわけがない。
沖縄にいるのだから。
それに、海斗がここに来る理由もない。
そもそも、潤一と海斗にはなにひとつ接点などないのだから。
ここは大都会、東京なのだ。
似ている人がいたっておかしくない。
見間違いだ。
「陽妃さん、中に戻りましょう。せっかくだし、ご馳走になりませんか? サンドウィッチ」
「そうだね」
「行きましょう」
あたしはもう一度だけ通りを確認して、踵を返した。
「陽妃さんに報告したいことたくさんあるんです。聞いてくれませんか」
「もちろん。あたしもたくさんあるの」
バカみたいだ。
海斗がここに来るなんて、絶対、有り得ないのに。