恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
雷に打たれて硬直したようにそのページを食い入るように見つめた。


思いがけない光景に、あたしの心臓は早鐘のようにトクトク脈打つ。


「待って……ください」


なんで。


これは、どういうこと……。


「なに……どうしたの……」


と、堀北さんが右手をすっと引っ込める。


あたしは芝生にへたりと座り込んだ。


「あの、これ……」


動揺を隠しきれなかった。


ノートに触れる手が震える。


「……なんで」


来たの……?


ここに。


どうして……。


やっぱり、さっき見たのは、そうだったの?


……なんで。


「須藤、大丈夫か?」


堀北さんに肩を叩かれてゆっくり顔をあげる。


「え……?」


「お前、顔色が悪いぞ」


「堀北さん、あの」


震える指先で、確かに見覚えのある筆跡をなぞる。


「この人。いつころ、ここに来たか覚えてませんか?」


数ある名前の中、その筆跡を指差すと、ノートを覗き込んだ堀北さんは難しい表情で首をかしげた。


「え……と。ごめん。ちょっと覚えてないなあ」


「思い出して」


「えっ」


「お願いします」


「えーっと……うーん」


堀北さんは困った様子でページをめくりながら、途切れ途切れに言う。


「ページからいって……須藤より後に来場してるみたいだな。途中で受付交代したから……その時かもな……ごめん、思い出せないな、ごめん」


「そう……ですか。そうですよね」


「交代してもらったやつに聞いてみるよ」


と堀北さんは言ってくれたけど、あたしは首を振った。


「いいんです。ごめんなさい、変なこと言って」


ふわりとやわらかな風が吹いた。


風を深く吸い込む。


鼻の奥がつーんとした。


涙が頬を伝う。
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