恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
潤一……。


ごめんなさい、潤一。


「バカみたいでしょ……失礼ですよね、潤一に」


頬を伝う涙が、ぽつぽつと、降りだした雨のようにノートを濡らした。


「軽蔑しますよね、普通」


ただ、同姓同名なのかもしれないのに。


でも、もう、どうにもならない。


ただ、この名前を見ただけなのに。


ただそれだけのことなのに。


こんなに泣けて、どうにもコントロールがきかなくなってしまうくらい。


「でも、あたしやっぱり……」


忘れられない。


どんなに頑張っても、努力しても。


結局、忘れるなんてこと、あたしにはできない。


この人のことが好きでどうしようもない。


「好きなの……ずっと」


あたしは芝生に座り込んだまま、ノートを胸に抱き締めて吐き出すように、泣いた。


「最低、あたし」


潤一の隣にいる時も、潤一の帰りを待っている時も。


仕事をしていても。


何をしていても。


結局、いつも頭の片隅に、胸の奥に、必ずこの人がいて。


気付かない振りをしていただけで、四六時中、この人のことばかりの10年だった。


そして、今も。


「やっぱり好きなんです……たまらなく」


泣いても、泣いても、どうにもならなかった。


自分の中では、もうとっくに過去になっていたはずなのに。

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