恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
それから4月になって、福岡から東京へ小春が戻った。


小春は本店の店長に昇格したのだ。


そして、94歳の現役キャリアウーマンの引退をほのめかす知らせが届いたのは、さらに1ヶ月後のことだった。


本州からひと足遅れて、ようやく桜が満開を迎えた、5月。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー姉ェネェ、元気ですか。

今年の夏休みは忙しくなりそうで帰れそうにないので、先週バイトの休みをもらって島に帰って来ました。

その時、オバァが妙なことを口にしました。

94年も生きてしまった。もうじゅうぶん生きた。悔いはない。なんて言うの。

現役引退の日は美波たが思っているより早いのかもしれません。

相変わらず頑固だし元気だけど。

どうも最近は体調を崩すことが増えたようで、気落ちしとるみたいです。

何よりウシラシの的中率が下がったことを気にしているらしいのです。

ここ1、2年はほとんどハズレ続きみたい。

さすがのオバァも自信を失ったようで、ついに決めたようです。

考えてみればオバァも8月で95歳。

次のウシラシを最後に、ユタの表舞台を降りようと考えておるようです。

なんだかオバァ、また少し体が小さくなった気がします。

次のウシラシ、グッドニュースだといいね。


              美波
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その夏、8月。


美波ちゃん経由で、その知らせは届いた。






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ハルヒ
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8ガツ13ニチ
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ウシラシ有リ
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果報
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          オバー
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「もー。おばあの手紙読みにくい」


その知らせが届いた翌日。


あたしは夕方の報道ニュースでそれを知った。

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