恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
冬の冷たい空気と一緒にひょっこりと現れた彼女たちを見て、シゲさんが文庫本をテーブルに落としてぎょっとわ目を見開いている。


全身黄色と全身赤色の若い女の子が現れたのだから、無理もない。


あたしも「ギャッ」と声を漏らしそうになったくらいだ。


全身黄色の彼女はあたしを見付けたとたん、ぱああっと笑顔になった。


「あいっ! 姉ェネェ!」


「みっ……」


啜っていたコーヒーをむせそうになった。


「美波ちゃん?」


「あんれまあ……」


宏子さんも呆気にとられたのか、ふたりを舐めるように見つめて、開いた口が塞がらない様子だ。


シゲさんなんて老眼鏡を上にずらして「ヒョエー」なんて間抜けな声を出す。


美波ちゃんとの念願の再会は感動を飛び越えて、ちょっとぶっ飛んだものだった。


「あ、姉ェネェ、紹介するさ」


と、美波ちゃんは一緒に来た女の子の華奢な肩に手を乗せて、にんまりした。


「この子や、ケイちゃんさ」


栗色のロングヘアー。


美波ちゃんより頭ひとつぶん低い背丈。


ビー玉みたいにまあるい目。


「同じ大学でさバイト先も一緒でさ! 親友さあ! 博多出身だよ。ケイちゃんやぁショウくんのファンなんだしさ」


ねっ、と美波ちゃんに肩をバシバシ叩かれた彼女は、小柄で華奢で小動物のように可愛らしい子だった。


「初めまして」


全身、上から下まで赤色の彼女は緊張した面持ちでぺこっと頭を下げた。


「井上桂子(いのうえ けいこ)たい。お世話になりますけん」


「ああ、いえ、こちらこそ……あ、あたしは」


名前を言おうとしたら、先にケイちゃんに言われてしまった。
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