恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
「ずっと会ってみたいなっち思っちいたんたい。美波の姉ェネェに」


「あたしに?」


「はい」


ケイちゃんは人懐っこい笑顔で頷いた。


「美波、毎日、姉ェネェの話ばかりしちゅるから、どげん人なんやろっち思っとったん。美波の言うてた通りやった。優しいちゅらさんやった」


「そんな……あたしなんて全然、美波ちゃんが思ってるような人間じゃないよ」


否定しながら肩をすくめるあたしをじっと見つめながら、ケイちゃんは笑った。


「そいに、美波の兄ィニィもちかっぱ素敵な人ばいね。かっこよかし」


ほんの少し、ドキっとした。


まさか、ここでそんな話題が飛び出すとは思っていなかった。


「あ……海斗のこと?」


「はい」


「ケイちゃん。海斗に会ったことあるの?」


「はい。でも、そげんえらいたくさんはなかたいばってん。何度か」


「そっか」


そりゃそうか。


美波ちゃんの親友なんだから、会う機会だってあるか。


「かっこよか、海斗先生は」


先生、か。


そっか。


先生、なんだよね。


海斗はもう研修医ではなく、立派なお医者さんなんだよなあ。


「……うん」


歯切れの悪い返事をしたあたしに、ケイちゃんは少々慌てた様子で言った。


「あっ! だけん、安心しちゃってん」


「え?」

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