恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
「ナンパの方がまだマシです」


その時、注文していたビールが出て来た。


「話すと長くなるので。とりあえずこれ飲ませてください」


あたしは2杯目のビールをぐーっと一気に体に流し込んでやった。


お酒に弱いわけじゃない。


どちらかと言えば強い方だと思う。


ただ、空きっ腹にいきなり2杯のビールはさすがに効いた。


12月の冷たい風にさらされて冷え切っていた体が、急激なアルコールを吸収してじわじわと熱く火照っていった。


「すみません」


あたしはバーテンダーにどぎついカクテルを頼んだ。


「ウォッカマティーニ」


お酒をお酒で割る、きついカクテル。


「かしこまりました」


バーテンダーは少々驚いた顔をして、すぐに微笑んだ。


「女性のお客様からウォッカマティーニを注文されたのは久し振りなんですよ。強いですよ。大丈夫ですか?」


アルコールに弱いわけじゃないし強い方だけど、かといって男と対等に朝まで飲めるほど強いわけでもない。


「大丈夫です」


でも、ムシャクシャがおさまらなくて、とにかく酔ってしまいたかった。

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