恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
「大丈夫か、須藤」


「へ?」


「ふらついてるじゃないか。きっつい酒飲んでるからな」


「大丈夫ですよ」


「転ぶなよ」と心配そうな堀北さんに笑顔を返して、トイレに向かった。










「うんわあ……ぶっさいくー」


鏡に映る自分を見て、虚しくなった。


浮腫んで腫れぼったくなった二重まぶた。


酔っ払って崩れ始めたアイメイク。


赤く充血して潤んだ目。


24歳になった今、自慢できることはお酒を美味しく飲めるようになったこと。


ああ。


自慢にもならない。


瞬く間の6年だった。


18歳の春、里菜に切ってもらった髪の毛は、その歳月を明確に物語っている。


顎下までしかなかった髪の毛は6年かけてまた胸本まで伸びてしまった。


これだけの月日をあたしは生きて来たのだ。


この賑やかな街、東京で。


店とマンションを往復の毎日。


仕事をして、休みの日は溜め込んだ家事をこなして、時々お酒を飲んで。


気付いたらひとつずつ着実に歳を重ねて24歳になっていた。


大きな使い道のないお金は、しばらく海外を転々と旅行できるくらい貯まってしまった。


あたしは何をしたいのだろう。


何をしているんだろう。


何を、待ち続けているんだろう。


期待できないことは分かっているのに。

< 25 / 223 >

この作品をシェア

pagetop