恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
あくまでも飲み過ぎたことを、だ。


彼と寝たことは後悔していない。


外は良い天気らしい。


辺りをぐるりと見渡す。


6畳ほどの狭い部屋はベッドと壁時計があるだけで殺風景だった。


午前10時。


榎本さんは案外、几帳面な性格かもしれない。


枕元にきちんと畳まれた真っ白なバスローブが置かれてある。


それを裸の体に羽織り、ベッドを抜け出した。


バスローブからは柔軟剤の優しい香りがした。


寝室を出るとそこはリビングで、ふたり掛けのソファとテーブルと椅子があった。


香ばしい珈琲の香りが立ちこめている。


真っ白なラグ絨毯。


暑いくらいに暖房が効いていた。


リビングをぐるりと見渡しても彼の姿はない。


ゴウン、ゴウン、と唸るような音が聞こえる方へ行くとそこはバスルームで、その片隅で洗濯機が回っていた。


【toilet】


ノックをしても返事はないし、開けてみてもいない。


リビングの奥はキッチンになっていて、そこにもいない。


寝室の隣の部屋のドアを開け、反射的に顔をしかめてすぐに閉めた。

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