恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
その表情があまりにもやわらかくて優しくて、急にくすぐったい気持ちになった。


「はい」


「寒くないか、それ一枚で」


榎本さんがマグカップでバスローブを指す。


「あ。すみません、勝手に。服が見当たらなくて」


「そうだろうなあ。今、洗濯機の中だからなあ」


「えっ」


だから洗濯機が回ってたんだ。


「洗濯してくれたんですか?」


「あー大丈夫。乾燥機あるし。昼までには乾くよ」


「すみません。ありがとうございます」


「あ、でもアレか。ブラは乾燥機NG? 縮む?」


へらっと笑いながら榎本さんがテーブルの上にマグカップを置く。


「いや、大丈夫そうだなあ」


「え?」


「だってほら、そんな大きくなかったし」


榎本さんは両手をわしゃわしゃ動かすジェスチャーをして、あたしの胸元を見てにへと笑った。


あたしは反射的に両手でガードして彼を睨んだ。


「最低!」


「男はオオカミなんですよー、赤ずきんちゃん」


「セクハラ!」


「お。何、訴えようっての」


テーブルの上に並べられた何枚もの写真と、一眼レフのフィルムカメラ。


榎本さんは何やら作業をしていた。

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