恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】
すると、彼はまた写真の白い花を見つめて言った。


「実は僕も。この写真を撮るまで知らなかったよ。白いラベンダーがあるなんて」


あんまり綺麗で思わず撮っちゃったんだよね、そう言って、彼はテーブルに戻って行った。


「で。帰って来てその写真持って聞きに行ったんだけど。花屋のオッチャンが教えてくれたんだよね。ラベンダーだって」


「そうなんだ」


本当にあるんだ。


白いラベンダー。


関心深く写真を眺めていると、


「陽妃」


唐突に名前で呼ばれて不覚にもドキッとしてしまった。


振り向くと、作業をしながら「いいことを教えてやろう」と榎本さんが言った。


「白いラベンダーの花言葉は“あなたを待っています”」


「……え」


“あなたを待っています”


あたしはその花言葉に魅了されてしまった。


あたしも……待っているから。


ずっとずっと、待っていたからだ。


「薔薇とか向日葵とか、他にも色んな花言葉教えてもらったんだけどさ。ほとんど忘れちゃったなあ」


作業しながら榎本さんはしゃべり続けていたけど、あたしは半分以上を聞き流して、ただただその写真を眺め続けた。


榎本さんに肩を叩かれて我に返るまで、ずっと。


「……ひ。陽妃って」


「えっ」


「えっ、じゃなくて。そんなに気に入った? この写真」

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