蝉鳴く季節に…
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「あ、蝉が鳴いてる…」
誰に言う訳でもなく、私はふと呟いて顔を上げた。
自宅の自分の部屋、開け放たれた窓から見える青空。
夏独特の濃い青と、羊みたいな白い雲のコントラストが重なるその空は、まるで一枚の水彩画の様に、窓枠一面に広がっている。
その夏空の中、高い高い蝉の鳴き声が、吸い込まれる様に響いていた。
それは、蒸された夏の空気が漂う部屋の流れに、ぼうっと身を任せていた私の意識を戻すには、充分すぎる声だった。
荷物をまとめていた手を止め、私は立ち上がる。
甲高い蝉の声は、胸の奥深くにしまい込んだ、古い思い出のモノクロフィルムに色を着ける。
夏の空を見上げ、その季節の愛しさを、鮮やかさを焼き付けろと……言われている様で…。
雲の形が変化していく様に、景色も、時間も、そして今も一度きりのものなのだと教えられている様で……。
窓の前に立ち、私は空を見上げた。
額から流れた汗が頬を流れ落ち、そのくすぐったい感触に、思わず汗ばんだTシャツの裾でぬぐう。
誰に言う訳でもなく、私はふと呟いて顔を上げた。
自宅の自分の部屋、開け放たれた窓から見える青空。
夏独特の濃い青と、羊みたいな白い雲のコントラストが重なるその空は、まるで一枚の水彩画の様に、窓枠一面に広がっている。
その夏空の中、高い高い蝉の鳴き声が、吸い込まれる様に響いていた。
それは、蒸された夏の空気が漂う部屋の流れに、ぼうっと身を任せていた私の意識を戻すには、充分すぎる声だった。
荷物をまとめていた手を止め、私は立ち上がる。
甲高い蝉の声は、胸の奥深くにしまい込んだ、古い思い出のモノクロフィルムに色を着ける。
夏の空を見上げ、その季節の愛しさを、鮮やかさを焼き付けろと……言われている様で…。
雲の形が変化していく様に、景色も、時間も、そして今も一度きりのものなのだと教えられている様で……。
窓の前に立ち、私は空を見上げた。
額から流れた汗が頬を流れ落ち、そのくすぐったい感触に、思わず汗ばんだTシャツの裾でぬぐう。