蝉鳴く季節に…
私には、弱い所を見せてもいいのに。



でも言えないんだ。



笑う事……それは杉山くんの優しさの一つだから。

わかるから、言えないんだ。





だから、私も笑う。

私も笑う事で杉山くんが安心するなら、杉山くんのその優しさを、私は受けなきゃって思う。





「千秋ちゃん、今日はゆっくりして行けるの?」


おばさんの言葉に、私はうなづいた。


「はい、夕方までに帰れば」

「ゆっくりして行ってね?私、家でやらなくてはいけない事があって、少し帰るの。千秋ちゃんが居てくれれば助かるわ」





おばさんはそう言い、洗濯物が入った紙袋を持ち上げた。




行ってらっしゃいと、杉山くんと見送った。





「母さん、ずっと最近病室に泊まり込みだからさ。疲れてるみたいなんだ」

「そうなの?」

「俺の熱が下がらないのが気になるんだって」




言いながら、杉山くんは上半身をゆっくりと起こす。




「リクライニング起こそうか?」

「あ…頼める?」




私はベッドのリクライニングレバーに手をかけた。




杉山くんが辛くならない様に、ゆっくり静かに上げていく。
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