蝉鳴く季節に…
ベッドに身体を預け、上がっていく背もたれに寄り掛かる杉山くん。


身体が辛いんだろうって事は、ため息のつき方でわかる。




肩から息を吐く様に、太く深くため息をつくから。






リクライニングの角度を確認して、ロックする。


重そうにまぶたを閉じる杉山くんを見つめ、私は近くに丸椅子を移動させて座る。



杉山くんの細い声が聞き取れる位置に。

杉山くんに手が届く位置に。






「背中、痛くない?」

「大丈夫だよ」




力無くうなづき、杉山くんはまた笑う。






繋がれた点滴は、今日は二つ。

痛み止めと…あとは何だろう?


杉山くん、点滴苦手なのに……。
毎日毎日、点滴なんだ。



身体の脇、ベッド上に投げ出された杉山くんの白くて細い腕には、青く腫れているあざが無数にある。

点滴の跡なんだって。
痛々しいくらい……。




血管が硬くなっているから、なかなか針が刺さらない上に、いつも同じ所からって訳にもいかないみたいだから仕方ないんだと、杉山くんから聞いてはいるけど…。



たとえ仕方なくても私は、杉山くんの腕に青あざが増えるのは見たく無い。
< 102 / 131 >

この作品をシェア

pagetop