蝉鳴く季節に…
そんな時、杉山くんは時間を噛み締めている様に感じる。



美味しいものを味わう様に、杉山くんは時間も味わっているんだなって。














あの時の私は、そう思いたかったのかもしれない。



無意識に、自分が傷付かない方を選んでいたのかもしれない。













「外、暑かった?」




聞きながら杉山くんは、白くて細い指を私の頬に触れさせてきた。







……一瞬、どきりと肩が震えた。






照れとかじゃない……。


そんなのじゃなくて……。







杉山くんを見つめた。


白い肌。
青いくらいに白い肌。


うっすらと血管が透ける程に白くて、夏なのに汗をかいていない肌……。






そして、その指先は………。









「水谷、汗かいてる。暑い?」

「…ううん、平気」

「そう?頬が熱いけど」

「………」




私の事なんて、いいよ。



杉山くん。



頬に触れている杉山くんの指先……。







どうして?


熱があるはずなのに、どうしてそんなに冷たいの?




血が通っているのに……何で?
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