蝉鳴く季節に…
杉山くん……。



杉山くん、杉山くん。






私もだよ。


私も、ずっと一緒にいたいよ。




こうしてずっと、杉山くんの笑顔を見ていたいよ。
優しい声を聞いていたいよ。





杉山くん。








「……私も…一緒にいたいよ」

「うん」

「夏だけじゃなくて、これからの季節も」

「うん」

「秋は鈴虫の鳴き声を聞いたり…そうしていたいよ?」

「……うん」







うつむいた杉山くん。


黒いキャップに隠れた表情は見えないけれど、私にはわかったの。



言いたかった。








“泣かないで”









でも、見ないフリをしたんだ。


杉山くんのうつむいた顔の下、ベッドのシーツに水滴が落ちて染み込んで、丸いシミになっていくのを見ても…私は見ないフリをしたんだ。




そのかわり、杉山くんの手を握りしめてた。











ねぇ、杉山くん。




私はここにいるよ?

ずっとここにいるよ?






何があっても、手を離したりしないよ。

ずっとこうして、寄り添う。





だから…だから……。



泣かないで…。
< 109 / 131 >

この作品をシェア

pagetop