蝉鳴く季節に…
「千秋ちゃん…あの子の最後の言葉、聞いてくれる?」

「……最後の?」




言葉………。





「千秋ちゃん、あなたへ残された夏生からの言葉なの。他の誰でもなく、あなただけへ…」








おばさんは、私の手を両手で握りしめてきた。


笑いながら、私の瞳をまっすぐに見つめる。






穏やかな、笑顔。





杉山くんに似てる………穏やかで優しい……春の木漏れ日の様に温かい……。













「“また明日会おうな、水谷”」





「………………」











また…………明日…………。








明日、会おうな……。












………水谷。















「………杉山……くん」














生きようと、したんだね?




杉山くん………。








最後まで、明日を信じていたんだね?











また明日って………言ってくれるんだね?
















さよならじゃ、ない。




さよならじゃないんだ。







また、明日があるんだ。








会えないからさよならなんて、無い。




会えなくても、さよならじゃないんだ。







< 120 / 131 >

この作品をシェア

pagetop