蝉鳴く季節に…
20
蒸し暑い部屋。
生温い風。
窓から見える電柱では、まだ蝉が鳴いている。
暑さを際立たせる鳴き声。
窓から見える空は、彼方海のある方角に入道雲をたたえ、高く、高く、澄んでいる。
変わらない。
あの頃と変わらない空。
変わらないから、思い出してしまうのかな。
考え、ふと笑みが漏れた。
汗で頬に張り付いた髪を、指にからめて耳にかける。
「…さて、そろそろやらなきゃ」
独り言を呟き、私は片付け途中の部屋の中へと視線を移した。
部屋の隅、重ねられた段ボール箱。
私は、来週にはこの家を出るんだ。
杉山くんと会えなくなってから、数年が過ぎた。
私は、高校を卒業後、看護学校へと進学、卒業。
そして、市中病院へと就職。
悲しい事、辛い事もあるけれど、看護師の仕事はやりがいがあり、頑張ってこれた。
『自分の力を信じる』
辛い時は、その言葉をおまじないにしてきたんだ。
.
生温い風。
窓から見える電柱では、まだ蝉が鳴いている。
暑さを際立たせる鳴き声。
窓から見える空は、彼方海のある方角に入道雲をたたえ、高く、高く、澄んでいる。
変わらない。
あの頃と変わらない空。
変わらないから、思い出してしまうのかな。
考え、ふと笑みが漏れた。
汗で頬に張り付いた髪を、指にからめて耳にかける。
「…さて、そろそろやらなきゃ」
独り言を呟き、私は片付け途中の部屋の中へと視線を移した。
部屋の隅、重ねられた段ボール箱。
私は、来週にはこの家を出るんだ。
杉山くんと会えなくなってから、数年が過ぎた。
私は、高校を卒業後、看護学校へと進学、卒業。
そして、市中病院へと就職。
悲しい事、辛い事もあるけれど、看護師の仕事はやりがいがあり、頑張ってこれた。
『自分の力を信じる』
辛い時は、その言葉をおまじないにしてきたんだ。
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