蝉鳴く季節に…
『あの!水谷さん!俺と食事にでも行きませんか?!』




緊張した面持ちの彼に、そう声を掛けられたのは二年前くらい。




驚いた。




驚いたけれど、緊張から声が上ずっていた彼に、私は大笑いしてしまったんだ。





『すいません…前から水谷さんが気になっていて…かわいいなぁって……でも…突然すぎでしたよね?』



申し訳なさそうに頭をかく彼に、私は好感を抱いた。




『私こそごめんなさい。笑ってしまって……食事、いつにしますか?』

『えっ?!行ってくれるんですかっ!』






やったぁ!と、病院の廊下でガッツポーズを取る彼には、さすがに慌てたけれど。









それから二年、彼とは良い付き合いをしてきた。



新木くんといると、安らぐ。

強がらなくていいから。





新木くんは、まっすぐで素直。


それに前向き。



落ち込むとすぐわかる。



(俺は大丈夫!俺はイケてる!だからうまくいく!)

って、部屋の壁に独り言を呟くから。





それで、次の瞬間には笑っているのがすごいと思う。





面白くて、楽しい。
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