蝉鳴く季節に…
「あ…千秋、以外って顔してない?」

「え?そんな事〜…」




ホント、敏感。






「この本から、諦めない勇気を貰ったんだ。俺のバイブルの一つ」

「…………え」











『俺のバイブルだね』











「………杉山…くん」





同じだ。


新木くん、同じ事……。









「どしたの?千秋」



本から顔を上げ、新木くんは首を傾げてる。





「え…ううん……昔、同じ事を言った人がいたから…びっくりして」

「杉山くん?」

「え?!」

「千秋、そう呟いてたよ」




あ………声に出てたんだ。






「昔の恋人?」

「恋人では無かったけど……好きだった人」

「ふぅん」





すねた様に唇をとがらせ、新木くんはうなづいた。


うなづきながら、エメラルドグリーン色の表紙を勢いよく閉じた。






「ま、いっか!」

「え?」






詳しく聞かれるのかなと構えていた私に、新木くんは満面の笑顔を向ける。






「いんじゃない?好きだったってはっきり言えるのは、実りある付き合いをした証だしさ」
< 129 / 131 >

この作品をシェア

pagetop