蝉鳴く季節に…
「ごめんな、わざわざ届けて貰って。面倒だったろ」
「ううん、私んち近所だし…」
「そうなの?」
「病院の裏の方だから」
ホントに近いんだと、彼は笑った。
「それに、面倒でもないよ。濱田先生も早く届けたいって言ってたし」
最初は少し、面倒臭いって思ってた。
でも、何でかな?
杉山くんを見た途端そんな気持ちは、まるで熱帯夜に冷たいシャワーを浴びた後みたいに、さっぱりと流されて消えていたんだ。
杉山くんは、笑ってた。
ビー玉みたいにキラキラした瞳は曇りが無くて、キレイなものだけを見て吸い取った様に澄んでいて、見つめられていると、面倒臭いって思ってた気持ちを見抜かれそうで…。
私は慌てて視線をそらした。
気恥ずかしさをごまかしたくて、ジュースのプルタブに指をかける。
「……あれ?」
硬い…。
何度もプルタブを弾く私の前に伸びてきた、細くて神経質そうな白い指。
「貸して」
杉山くんは缶を受け取ると、プルタブを上げた。
プシッて音と共に鼻をくすぐる、甘酸っぱい香り。
「ううん、私んち近所だし…」
「そうなの?」
「病院の裏の方だから」
ホントに近いんだと、彼は笑った。
「それに、面倒でもないよ。濱田先生も早く届けたいって言ってたし」
最初は少し、面倒臭いって思ってた。
でも、何でかな?
杉山くんを見た途端そんな気持ちは、まるで熱帯夜に冷たいシャワーを浴びた後みたいに、さっぱりと流されて消えていたんだ。
杉山くんは、笑ってた。
ビー玉みたいにキラキラした瞳は曇りが無くて、キレイなものだけを見て吸い取った様に澄んでいて、見つめられていると、面倒臭いって思ってた気持ちを見抜かれそうで…。
私は慌てて視線をそらした。
気恥ずかしさをごまかしたくて、ジュースのプルタブに指をかける。
「……あれ?」
硬い…。
何度もプルタブを弾く私の前に伸びてきた、細くて神経質そうな白い指。
「貸して」
杉山くんは缶を受け取ると、プルタブを上げた。
プシッて音と共に鼻をくすぐる、甘酸っぱい香り。