蝉鳴く季節に…
「あ!そうだ!」

「何?」

「高校はね、給食じゃないの。お弁当なの」

「え?」

「だからね、お弁当なの。たまにね、購買でパンとか、おにぎりとか買うけど…」

「ぶっ…あははは!」




慌てて違う返答をした私を、杉山くんは大笑いした。





「給食って!弁当って!」





………そんなに笑わなくても。






「どんなって聞くから…」

「いや、聞いたけどさぁ」



じゃあ、聞かなきゃいいのに…。






少しすねた私に気付いたのか、杉山くんはゴメンって言った。

けど、まだ笑ってる……。






「じゃあ、水谷の購買のオススメは?」

「え?あ…バタークリームパンとか、チョココロネとか、チキンカツサンドとか…」

「おいしい?」

「うん、私はバタークリームパンが一番好き。でも、すぐ売り切れちゃうの」

「そっか」







頷いた杉山くんは、また少しだけ……少しだけ淋しそうな顔をした。





キャップを被っている頭を撫でながら、窓の外に視線を移してる。






窓の外では、ポプラの濃い緑の葉が、戯れる様に揺れている。




静かな病室に、わんわんとこだまする蝉の声。





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