蝉鳴く季節に…
5
「ねぇ、千秋。昨日杉山に会えた?」
次の日、興味津々に声を掛けてきたのは梨絵。
朝のホームルーム前。
ざわざわと、みんなの声や椅子を引く音が交じりあう教室。
笑い声…。
「うん、まぁ…」
私は、曖昧に返答した。
周りの雰囲気に合わせて、はしゃいで話す気分じゃなかった。
そんな風に、軽く話題として乗せちゃいけないって、何となく思っていたんだ。
なぜかはわかんない。
けど、杉山夏生を…杉山くんを、そんな風に扱いたくなかったんだ。
「杉山、元気そうだった?」
「うん、多分…」
「多分?」
「だって、そんなに話してないから…」
そっかぁ…と呟いた梨絵は、いつもの様に机の上に腰を降ろす。
短いスカートを少し下にずらしながら、梨絵は短いため息をついた。
「杉山って、何の病気なんだろね」
「…さぁ」
………髪が無かった杉山くん。
隠す様に、キャップを深く被ってた。
それに触れる事はできなかった。
軽い病気ではないのかもしれないって思ってしまって、会話みたいに聞く事なんてできなかったんだ。
次の日、興味津々に声を掛けてきたのは梨絵。
朝のホームルーム前。
ざわざわと、みんなの声や椅子を引く音が交じりあう教室。
笑い声…。
「うん、まぁ…」
私は、曖昧に返答した。
周りの雰囲気に合わせて、はしゃいで話す気分じゃなかった。
そんな風に、軽く話題として乗せちゃいけないって、何となく思っていたんだ。
なぜかはわかんない。
けど、杉山夏生を…杉山くんを、そんな風に扱いたくなかったんだ。
「杉山、元気そうだった?」
「うん、多分…」
「多分?」
「だって、そんなに話してないから…」
そっかぁ…と呟いた梨絵は、いつもの様に机の上に腰を降ろす。
短いスカートを少し下にずらしながら、梨絵は短いため息をついた。
「杉山って、何の病気なんだろね」
「…さぁ」
………髪が無かった杉山くん。
隠す様に、キャップを深く被ってた。
それに触れる事はできなかった。
軽い病気ではないのかもしれないって思ってしまって、会話みたいに聞く事なんてできなかったんだ。