蝉鳴く季節に…
参考書は昨日届けちゃったし……。
何も用事無いのに行くのって、不自然だよね。

違和感ありまくりだよ。





私はただのクラスメイトで、しかも高校からだから、本当に何も無いんだ。

大体、昨日が初対面だもん。
一度話したから行くとか、馴れ馴れしいし。





無いな、私には。

行く理由が、何も……。








参考書……。

私も一冊くらい、忘れちゃえば良かったな。







…………参考書。











「あ……先生!」




考えていて気付いたら、私は背を向けかけた先生のシャツを引っ張ってた。








……あれ?

何?



私……何やってるんだろ……。










「何だ?どうした?」

「え…あ…それ……参考書…」

「何だ?見たいのか?」

「そうじゃなくて、私……私が届けますか…って…思って」








私……何を言ってるんだろ。


何を言い出してるんだろ。







考えがまとまるより先に…言葉が…手が出てた。


先生のシャツを掴んでたんだ。







ホントに…どうしたんだろう。





でも、でも……。


私が届けたい。


今言わなきゃ、もう、これからは無い。

無いんだ。



だから…だから……。



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