蝉鳴く季節に…
途端、ドキリと胸が疼く。
杉山くんはいた。
グレーのTシャツにスウェット、黒いキャップ姿。
ベッドの上にあぐらをかいて、読みかけの本を膝に乗せて。
でも、視線は本じゃなかった。
杉山くんは、窓の外を見つめてた。
七階からの窓だと、見える景色は限られる。
前の外来用病棟と繋がる、四階までの高さがある大きな渡り廊下。
その屋上に造られた、人工の中庭。
そこに立つポプラの木の枝と葉が、青空を背景にわずかに見えるだけの景色。
ささやかすぎる景色…。
杉山くんは、それを見つめていた。
軽く瞳を細めて、まるで、何かに焦がれる様に。
……何が見えるんだろう。
杉山くんは、何を見たいんだろう。
わからないけれど、やっぱりその表情は何かを憂いているかの様で。
私はドアの前で、声を掛けられずにいた。
ううん、声を掛けちゃいけないんじゃないかって感じてたんだ。
このまま、参考書と花を置いて帰ろうか…。
考えていた私に、杉山くんは気付いた。
杉山くんはいた。
グレーのTシャツにスウェット、黒いキャップ姿。
ベッドの上にあぐらをかいて、読みかけの本を膝に乗せて。
でも、視線は本じゃなかった。
杉山くんは、窓の外を見つめてた。
七階からの窓だと、見える景色は限られる。
前の外来用病棟と繋がる、四階までの高さがある大きな渡り廊下。
その屋上に造られた、人工の中庭。
そこに立つポプラの木の枝と葉が、青空を背景にわずかに見えるだけの景色。
ささやかすぎる景色…。
杉山くんは、それを見つめていた。
軽く瞳を細めて、まるで、何かに焦がれる様に。
……何が見えるんだろう。
杉山くんは、何を見たいんだろう。
わからないけれど、やっぱりその表情は何かを憂いているかの様で。
私はドアの前で、声を掛けられずにいた。
ううん、声を掛けちゃいけないんじゃないかって感じてたんだ。
このまま、参考書と花を置いて帰ろうか…。
考えていた私に、杉山くんは気付いた。