蝉鳴く季節に…
「あのね、何て言うか…その、付き合うとか付き合わないとか、そういうのは自分の中にはまだ無くて」






あ…………違う。


違う、これ。





無いとか、そんなんじゃない。










ホントは……ホントは………。








「男の人って、私にはよくわからないし、だから気持ちがわかないし」






違う。



私が求めているのは……。




「好きになれないかもしれないのに、付き合うのは嫌なの。長谷川くんにも悪いと思う。長谷川くんが嫌いとか、そういうんじゃなくてね?」





私……何言ってるんだろ。






「だから…そんな気持ちで長谷川くんと付き合えないよ」






何が言いたいんだろう。





違うのに、それが全ての理由じゃないのに。




長谷川くんを知らない。

だから、好きになれるかわからない。



それは本当。








でも……私の中ではずっと、杉山くんの笑顔が回っていたんだ。









誰かと付き合ってしまったら、今みたいに話をしに行けなくなる。

時間が足りないって思ってしまうくらいなのに、更に足りなくなるよ。






嫌なの。








杉山くんと話す時間を、失いたくないんだよ。







それが、恋愛感情なのかはわからない。

違うものかもしれない。




ただ、杉山くんと話がしたいんだ。







それが、今の私が願ってる事なんだ。










今、違う人に、自分の時間を使いたくない。





時間が、惜しいんだ。



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