蝉鳴く季節に…
だから、だから……。





「長谷川くんとは付き合えない」






今、大事にしたい事を捨てて、流されちゃいけない。

これも…杉山くんが教えてくれた事。









梨絵と恭子は、目を丸くしてる。

……何か私、強く語りすぎたのかな。


どうしよう……。







「あのね……」


「びっくりしたぁ…」





呟く様に言って、梨絵が突然笑い出した。






……何？

おかしい事言ったのかな。







戸惑う私の表情が不安そうに見えたのか、梨絵は笑いがおさまらないまま違う違うと手を振る。





「違うの。千秋って最近変わったなって思ってたんだよね。何て言うか、自分に自信をつけてきたって感じ？」

「自信？」

「そう、だからさ、今の長谷川と付き合えないって言葉にもびっくりしちゃってさ。前の千秋なら自分の意見言わずに、じゃあ…って流されて付き合ってたに決まってるもん」





あんまり驚いてる自分に笑っちゃったんだよと、梨絵はまた笑う。






でも、確かにそうかも。




前の、杉山くんと会う前の私なら、流されていたに違いない。







言われたから。

こんな私でもいいと言ってくれるなら。


二人もいいと言ってくれたから。






それだけの理由で、私は流されていたに違いない。




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