蝉鳴く季節に…
女の子は時折うつむきながら、ベッド上に座る杉山くんと話をしている。





腰まである長い黒髪、パフスリーブから伸びた白くて細い腕、顔は見えなくてもその立ち姿だけで、かわいい子だと確信が持てた。










話は聞こえない。

けれどかすれている女の子の声は……泣いている様だった。











きっと泣いていたんだ。







だって…………杉山くんの表情がいつもと違ってたから。



見た事無い表情。








うつむき、何度も口を開きかけて、悲しそうに切なそうに女の子を見上げるその表情は……二人の関係がただの友人ではないと思わせた。













………別れた彼女。







梨絵が言ってた。

杉山くんには、長く付き合っていた彼女がいたって。









かもしれない。

彼女がそうなのかもしれない。







きっと、そうだ。










やがて崩れる様に、杉山くんの膝に顔を埋めた女の子。





杉山くんは………そんな女の子の頭を、髪を、白い指で撫でていて……。




悲しそうに…切なそうに……。




だけど触れているその指は、まるで硝子細工を手に取る様で…。


壊れないように、指先に優しさを込めたような優しい触れ方で。







それを見た途端、自分の中で惨めな気持ちが溢れはじめた。




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