蝉鳴く季節に…
病院を走り出た。



訳わかんなくて、自分が訳わかんなくて。

何がしたいのかわかんなくて。








涙の止め方もわかんなくて。





わかんないまま走って、ただ走って、走りながらも思い出してる。




思い出しちゃってるよ。













杉山くんの言葉や、笑顔や、呟く声……。











“……走りたいなぁ…蜃気楼の一部になるくらいに…“








もしもなれるなら、私も今…蜃気楼になりたいよ。


蜃気楼になって……そうして……そうして………。




















……杉山くん。






今考えると、今までの人生であの時が、一番速く走れた様な気がするよ。







運動は苦手なのに、汗だくで走ってたんだ。









それだけ、必死だったのかもしれないね?




あなたに期待していた自分から逃げる為に、必死だったのかもしれないね?











わからなかったから……。




あの時の私はまだ、本当に何にも知らない子供だったから。









だから、何もわからないままで、知ろうともしないで、理由無く簡単に逃げられたのかもしれないね。








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