蝉鳴く季節に…
「おたふく風邪……じゃないよね?」


第一声がこれって事は、私は相当むくんでるって事なんだろうな。



「……おたふくじゃないから大丈夫だよ」

「だよね?」





笑いを堪える梨絵を、自分の部屋に招く。








「何かさ、昨日千秋泣いてたじゃない?それで今日休みだなんてメールきたからさぁ〜…恭子と気にしてたんだよ?」



いつもの定位置、丸テーブルを挟んだ位置で私と向き合って座りながら話す梨絵。

そう言ってくれる表情からは、本気で心配してくれている気持ちが伝わってきた。



嬉しかった。




「ごめんね?心配かけて…ちょっとね、体調悪かっただけだから…」

「だけ?ホントに?」

「うん…」

「ホントにホント?」

「……うん」




顔を覗き込む様に近付けてくる部活帰りの梨絵からは、微かなグラウンドの砂の匂いと、フローラルのデオドラントコロンの香りがした。






「体調だけ…何かあやしいな」

「あやしくないよ」

「千秋がさ、〇〇だけ…とか言う時はね、大体他にも理由あるんだよね」

「…………」



さすが……五年越しの親友…。



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