蝉鳴く季節に…
病院へ着いた私は、雨の中を走ってきたみたいに汗だくになってた。



上がらなくなってきた足を気力で動かして、エレベーターへと向かう。





しばらく待っていたけれど、なかなか降りてこないエレベーターにやきもきして、階段へと走る。



今の私なら、七階までなんて昇れる気がしたんだ。








登り始めたら、予想外にキツクて……。



でもね、自分の中で目標を立てていたの。










登りきれたら………走りきれたら…………きっと…杉山くんに……。












七階………。

階数を表示する数字。



七はラッキーな数字なんだよね。








もたつき始めた足は、前に進みたい私の思いに反して、まるで磁石に吸い付くみたいに、なかなか床から離れてくれない。



膝が震えてる。



疲れからか緊張からかわからないけれど……。








もう少しで七〇五号室。





呼吸がままならないよ。

身体全体が心臓みたい。






“杉山夏生“





病室のプレートを見た途端、今度は耳の中に心臓が移動したみたいになった。






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