蝉鳴く季節に…
開いた病室のドア、そっと中を覗く。





杉山くん……。






杉山くんは、ベッドに横になってた。




三つも下がった点滴のパック。
隣には、何に使うんだかわからない機械まである。





静かに、病室に足を踏み入れた。









白い壁……白い箱みたいな空間。





開け放たれた窓の前、部屋の色と同じ白いカーテンが、風に煽られて揺れている。




生温い風…………。




まるで、ここだけ世界から取り残されたみたいな…異空間みたいな……無機質さが漂ってる。






ここが現実だと気付いていたのは、静寂を裂く様に響く蝉の声のおかげだったのかもしれない……。






油蝉……。








「…………杉山くん?」










ベッドに歩み寄り、目を閉じている杉山くんに呼び掛けてみた。





白い………白い肌…。







血が通っていない様な、人形みたいな白すぎる肌。








「杉山くん……?」









声が震えた。



泣き声になっていたんだ。





いつの間にか、涙が溢れ出していた。







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