蝉鳴く季節に…
「ジュース飲む?」

「うん」




ベッドの端に身体を移動した杉山くんは、冷蔵庫に手を伸ばした。





……やっぱり少し、前より動きがにぶくなってる様に見える。







「はい」





プルタブが上げられたオレンジジュース。


気温差からその缶には、みるみる水の粒が浮かび上がってく。





「ありがとう」



受け取り、杉山くんと向かい合う形で丸椅子に座った。







「点滴、今日も多いね?」


透明な液体が詰まったパックが三つも下がって、杉山くんの腕につながってる。


「だから。俺、点滴嫌いだって言ってんのに」

「薬なんだから仕方ないよ。それで治るんなら我慢しなくちゃ」




笑って言った私を、杉山くんは見つめてた。


その表情が、なぜか強張っている様に見えたのは……気のせい?






「……ああ、そうだよな」



私から視線を反らし、杉山くんは笑い、それから瞳を伏せた。






私、嫌な事言ったのかな………。








「そういやさ、あと六日くらいで夏休みじゃね?水谷はどこか行くの?」







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