蝉鳴く季節に…
杉山夏生の病室は、七階にあるらしい。

七〇五号室。




病院に着いた私は、紙袋を右手に持ちかえて、エレベーターへと乗り込む。



紙袋の中身は参考書。
これが結構重い。


何でも、杉山夏生が勉強の遅れを気にしていて、世話好きな濱田先生が担当教科の先生達に頼んで、参考書を集めたらしい。

それなのに、自分は部活を見なきゃいけないから行けない。
けど早く渡してあげたいからなんて、濱田先生も人任せもいいとこだよ。


当然、梨絵と恭子も一緒してくれるかなと思ったら…。

梨絵は部活、恭子は彼氏と約束あるからなんて。




で、私一人。

心細いなぁ。





しかし杉山夏生…入院してまで勉強したいなんて物好き。
私なら一日中寝てるよ。


案外、堅そうな真面目くんなんじゃない?







考えている内に、エレベーターは七階に停まった。
紙袋を持ち直し、フロアに降りる。








ドキドキしてた。

期待と好奇心。




病室のプレートを確認しながら廊下を歩く。






七〇二……七〇三………あ、あった。





【七〇五号室 杉山夏生】




……着いちゃった。




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