蝉鳴く季節に…
慌てて示された場所に座り、窓の外を見上げた。








空はやっぱり少し赤くて、夜の闇に追い立てられる様に、少しずつその色を地上に隠そうとしている所だった。



朱色と藍色の対照的なコントラストは、印象的な程に互いの存在感を引き立てている。





綺麗。


綺麗だけど……。











「…月は?」







月が見えないんだけど…。









「杉山くん、月はどこに出てるの?」

「月?」

「言ったでしょ?綺麗な月が出てるって」





振り向いて、後ろであぐらをかいてる杉山くんに確認してみた。





「う〜ん…霞んだのかも…」

「え?」

「月は気まぐれだから」

「………………」







…………はい?








「それにこの病室の窓は西向きだし」








西向き……あれ?


太陽と月って、どの方角から昇るんだったかな…。











「…………ぶっ」









真剣に悩む私の耳に、杉山くんの吹き出し笑いが聞こえた。







「マジ天然だよな」

「何?」

「太陽と月は東から昇るから」
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