蝉鳴く季節に…
あ、そっか!東からだったんだ。







って事は…………。






「………………?!」





騙された?!






「騙したんだ!杉山くん!」

「いやぁ、空気の流れを変えようと思って」





本気で騙されるとは思わなかったと、杉山くんは爆笑……。




「…………」





ひどい。


騙された私も私だけど…。






「嘘つき…」

「うん、ごめん」

「これからは、杉山くんの言う事は疑う様にするからね」

「え?怒った?」

「ちょっとだけね」




嘘だけど。






「いや、月は見えないけど星は見えるよ?」

「え?」





差された杉山くんの指先につられて、つい再び窓を見上げる。










途端…背中に温もりを感じた。


柔らかくて、ふわりとした熱っぽい温もり。







背中から肩にかけて包み込まれるその感触に、私は反射的に身体を固くしてしまったんだ。









だって………。









杉山くんの両腕が、私の肩に絡み付いていたから。


杉山くんの胸板が、私の背中に寄り添っていたから…。


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