蝉鳴く季節に…
「ごめん、ホントはこうしたくて騙したんだ」







耳元で響く、杉山くんの声……。










どうしよう………。


動けなくなってる、私。



何?どうしたらいいの?



訳わかんないし、動けないし…何よりも………早くなってく心臓を誰か止めて!


杉山くんに聞かれちゃうよ!








嬉しさとかよりも先に、私は緊張してたんだ。

有り得ないくらいに緊張してた。



どう応えていいのかわかんなくて……。




驚いてるのと戸惑いと、杉山くんの呼吸の近さに心臓がバクバクと振動してて……。




頭の中が真っ白になっちゃってた。










「水谷、力抜いてよ」




杉山くんの声も近くて、唇の感触が耳から感じ取れそうなくらい近くて。







「俺にこうされるの、嫌?」








嫌……な訳無い。


嫌じゃないよ。




ただどうしていいかわかんないだけで……嫌じゃないよ。








緊張から声が出せなくて、私は首を横に振って返事をした。






「そっか…良かった」





耳にかかる、杉山くんのホッとするため息…。
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