蝉鳴く季節に…
近い……杉山くんの存在が近いよ…。





「なぁ、水谷」

「……うん」

「この前さ、俺と香奈子が話してるの見ただろ」




香奈子……?






私の脳裏に、ある光景が浮かび上がる。



長い髪の…泣く女の子の後ろ姿。





「ほら、櫻丘女子高の制服着た」

「うん…」






覚えてる。

綺麗な後ろ姿だった。






「あいつ、中学ん時の元カノ」




やっぱりね……。

私、確信してたもん。



でなきゃ、あんな風に優しく触れたりできないよ。








「あいつ、彼氏できたんだってさ」

「…え」

「矢代」

「…………」




矢代って…陸上部の?

梨絵が話してた、杉山くんの親友の…?





元カレの親友と付き合ってるの?





それって……杉山くんは辛いんじゃないのかな。

だって親友と元カノでしょ?


いくら別れたって言っても………。






「水谷、何考えてる?」

「え?」

「俺が辛いんじゃないかとか考えてない?」

「………」




思わず無言…。

やっぱりなと、杉山くんは小さな笑い声を私の耳元で立てた。
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